XCROOZ

べ り ー あ。

べ り ー あ。

べ り ー あ。


とろける時間。







唇がふるえるほど寒い朝。


ふとんを頭のてっぺんまで、すっぽりかぶる。
出たくなかった。
横向きになり、体を『く』の字にさせる。
このまま、ぬくぬくしていたい。


猫になりたい。
どこかの国のお姫さまに飼われて、なあんにも考えず、贅沢に暮らしてみたい。
でも。
あたしはわがままだから、たまに爪を立てて牙を出すかもしれない。





朝からそんなことを思っていたんだよ。
甘い甘い。
甘ったれ。




ふとんから顔半分出して、勇気を出して、がばりと起き上がった。




毛布をひきずりながら、リビングへ行って、暖房をつけて、ソファーにちょこんと座る。
写真集をぱらぱらとめくると、目に次から次へと色が飛び込んできて、頭が冴えた。

目覚めには、写真集を見るのは良いかもしれない。




TVをつけたら、ガキ使の傑作選みたいなのをやってたけれど、笑う元気もなくて。
シャワーを浴びた。
LUSHのボディーソープで体をなで洗う。
中島美嘉を歌いながら。
雪の華。





ふと、彼女のことを想った。
まだ眠ってるかなー。
そういえば。昨日は電話もLINEもしていない。
疲れているだろうから、そっとしておいてあげたかったから。

でも。さみしかったなー。
数日離れているだけでも、さみしかったんだよ。

恋をして、さみしさを覚えた。







さくり。
林檎を噛んだ。
丸のまま。








そして。やっと、
今日が始まったんだと実感した。






何を着ていこうかなー。
そうだ!ワンピにしよう。
どのワンピにしようかなー。

ベッドに5〜6枚置いて選んだ。
水玉ワンピにした。

すとん、と着る。
くるりとまわると、裾がふわあ、と広がる。





まったり準備してたら電車に遅れそうになって、急いでマンションを出た。
ベッドの上のワンピはそのままにして。











花屋の仕事は思った以上に大変だ。
手は荒れて皮膚科通い。
ステロイド軟膏と保護クリームとヒルドイドクリームを処方されている。
自宅では白い綿の手袋をつけてるよ。





花屋に来るお客さんは、8割が女性。
そして。
みんな、顔がおだやかなの。
きっと、心に余裕があるんだと思う。


たまに、男性客も来るよ。
彼女さんや奥さんにプレゼントするんだって。
あたし、心の中でニンマリしちゃうよ。
もらう方のことを想像すると。














仕事終わると、辺りは夜が降りてて。
スタバに寄った。
もう少ししたら彼女との、ある記念日なんだけれど、手編みのマフラーをあげたくて、手作りがいいなーって思って、こっそり編むために。


でもね。
あたし、生まれて初めて編み物するんだよ。



本を見ながらやったけれど、なかなかうまくできなくて、毛糸をほどいて、またやって、ほどいて、またやって、の繰り返し。

まわりから不思議そうに見られてて、恥ずかしいけれど、夢中になってやってたら手汗がすごい。

時間を忘れてやってた。




何度やっても、できないの。
笑えないよ。



だけれども。
絶対、編んでやるんだから。




あきらめないぞ。

うん。





気付いたら、毛糸のかたまりが床に転がってて、銀髪の男性が拾ってくれた。








手編みマフラーは彼女には秘密だから、こっそり隠れて作らなきゃ。










マンションに帰ると、彼女が実家から戻ってきていて、ぎゅーとハグ。
それから、ワンピを脱がせられた、
めまいがするような手つきで。






久しぶりに愛しあった。



彼女は自分が人間ということを忘れさせてくれた。







とろとろ、とハチミツが落ちるみたいな時間の流れを感じた。














いま、彼女はお風呂に入ってる。
鼻歌が聞こえるよ。










今夜は、くっついて眠ろう。
ぴたりと。

磁石みたいに。
2018/01/04 22:30